羽根 直樹 先生のアドバイスコーナー10

こんにちは。羽根直樹です。

名人戦リーグが後半に入っていますが、一つでも上を目指して頑張りたいと思います。

5月は例会を行い、参加していただいた皆様と楽しい時間を過ごすことが出来ました。

今回は例会の大盤解説で取り上げた対局を、もう一度振り返ってみましょう。

<1>

黒が△と急所に踏み込んできた局面です。
Aの断点をすぐに守るのは愚形になりますので、まずは反発をしたいというのが高段者の考え方です。
実戦は黒のワタリを防ぐという選択をしましたが、白1のように渡らせてあげるというのも有力でした。
黒2には、白3と好点へ先行する感じになります。

<2>

白Aのツナギは出来れば打ちたくない形ですので、そのまま左辺を連絡してしまう方が良かったですね。
ただ、その前にもっと大きなチャンスがありました。
白1のワリコミで、黒に断点を二つ作るのが有力です。
BとC、どちらかを切ることが出来ますので、黒は対応に困っていました。
1の場所が急所ですので、黒△も1とノビるべきだったということになります。

<3>

黒1は、白地を減らすという目的の自然な一手で、とても良い手です。
この局面は、打ちたいと感じる手がたくさんある状況でした。
実戦黒1の他に、下辺を広げるAのマゲや、左辺を補強するBの一間トビなども有力です。

<4>

39は38の左、58は51の左。
左上の白はとても強い石ですので、近寄りたくはありません。
そのような状況では、上辺は白地にさせてあげるぐらいの気持ちで打ちたいですね。
黒1と受けておいて、白2から4と上辺を囲えば黒5と大場に先行する、という考え方がオススメです。
白が2・4などとは守ってくれないと感じる場合は、黒1でAのツケから固めていくのも有力です。

<5>

白1はとても良い考え方です。
Aのツメでは無く、白1と封鎖をするのが左上の厚みを意識した攻め方となります。
白の形に弱点がありませんので、上辺だけで黒が生きるにはスペースが足りない感じです。
黒△の打ち過ぎを上手くとがめています。

<6>

102は101の下。白150のコスミは急所ですね。先に黒1を打っておけば、白に眼はありませんでした。
ただ、白8などから右辺や中央を狙われますので、取れれば良いとは限りません。
この死活を読めていれば、黒1でまずAなどと右辺の補強をして、黒1と黒Bを見合いにするのが冷静な判断となります。

<7>

不安定な石がお互いに無くなりましたので、ここからヨセに入りました。「ヨセになったら二線」が基本ですので、実戦の白1が最大です。
「中盤は不安定な石の攻めと補強」という考え方で打ち進めますので、中盤とヨセでは見る方向が大きく違ってきます。どの手が中盤とヨセの境目なのかを感じ取ることが、ヨセが上達するコツとなります。

<8>

190は35の右、46は65の右。
最後は左辺の黒の眼が無くなり、白の中押し勝ちとなりました。
終局直前にミスをしたのが原因で、黒1と打つことで2と3が見合いとなり生きていました。(コミ無しということで、微細ながら黒がわずかに勝ちそうな形勢です)
△の交換が無ければ黒が危険という形ですので、紙一重の勝負でしたね。
持ち時間が35分と短い対局ですので、狙い過ぎての打ち過ぎや手拍子もありますが、さすがと感じる競り合いでした。
攻守のバランスの取れた好局だったと思います。

→棋譜のダウンロードはこちら
アドバイス10棋譜解説