羽根 直樹 先生のアドバイス コーナー 31

こんにちは、羽根直樹です。

一力遼棋聖・天元・本因坊が、9月8日に世界戦で優勝しました。

応氏杯決勝5番勝負にて、謝科九段を相手に3連勝で決めました。

一力さん、おめでとうございます。

そして日本が世界戦で活躍できるように応援していただいた皆様、ありがとうございました。

今回の解説は、例会での対局(先・コミなし)です。

<1>

白1は好点のボウシでした。
そして黒2はaのカカリなども有力ですが、お好きな手を選択してよい場面です。
黒2のカタツキに対して、3のオシかbのハイかを直感で判断する一番の基準は、白△の幅です。
今回のように良い幅の時は、そのまま白地にすることが大きいので白3と押しましょう。
二間ビラキなどで狭い場合は、盛り上げても効率が良く無いことが多いのでbハイを選択します。

<2>

黒△に対して、白1と手抜きをしました。
aやbと守るのも立派な一手ですが、どちらも立派な手ならば見合いにしよう、という考え方ですね。
どの選択も有力ですが、「手抜き」に気付くということはとても大切ですので、良い判断だと思います。
左辺を手抜きするという選択をした場合、黒2の場面でどこに眼を向けるのが良いでしょうか?

<3>

黒模様が気になる局面でしたので、白1の三々が有力な入り方となります。
序盤すぐのダイレクト三々とは違い、黒模様が広がってきたときの白1は以前から有力でした。
黒2でどちらから押さえるかが悩ましい状況ですので、辺にある黒△の石どちらかが効率の悪い場所に来る、というのが白の主張です。
下辺に黒石があるので、白aからのハネツギを決める手もありますが、今後の競り合いに備えて白aを決めない方が主流となりました。
先手で荒らして白11などと先行する展開を目指します。
どのように侵入してもある程度の黒地は出来ますので、「攻められない」「白地が10目近くある」「先手を目指せる」という利点を考えると白1がおススメです。

<4>

左辺の黒はまだ安全とは言えませんが、aの守りは少し堅すぎましたね。
左辺の黒は、「aと生きる」「bで連絡」「cと脱出」という3つの方針がありますので、白に攻められてからでも間に合いそうです。
ここでは手抜きをして、黒1などと仕掛けることも可能でした。

<5>

白1は、aやbと補強していれば安全ですが、石数が多い場所ということで反撃しましたね。
黒2以降複雑なことになりましたが、黒10には白11と守りたい場面でした。
黒12と侵入されてしまいますが、白13と右上で利益を上げることが出来れば白に不満はありません。
白11で12と地を優先しましたので、黒11と切られて危険なことになりました。
白はどこかが取られてしまいます。

<6>

黒1のサルスベリは、止め方に迷うことが多いかと思います。
一番の基本形として、白2から4の捨て石を覚えておきましょう。
黒5に白6ですっきり止めることが出来ます。
白△に石がある場合などは白2で単に6が有力な時もありますが、危険なことも多いので白2から6の手順がおススメです。

白1と狙ってきましたので、黒は丁寧な対応が必要です。
少しでも手を止めることが出来れば難しい読みではありませんが、実戦ではうっかりしやすそうな形です。

中央の黒3子を取られて損をしてしまいましたので、白15目勝ちとなりました。
コミなしということもあり、中央が無事であれば微細の形勢です。
とてもバランスの良い内容で、お互いに相手の弱点をしっかりと狙えていました。
競り合いでの読みに少し正確さが増せば、急に成績がアップしても全く不思議ではありません。
△などの失敗した箇所がうっかりであった場合は、手を止めて読みを入れるタイミングがわずかに遅れているのかもしれませんね。

そのあたりの微調整をしながらミスを減らしてもらえたら、さらに良い碁が出来上がると思います。

以上

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